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更新日 2015-08-06 | 作成日 2007-09-15

Stories of The Rain

夢見るころを過ぎても

第四十一章 絞り込みセーフ?

written by Akio Hosokai

bind_57.jpgWalkmanとかiPod、そういうのが欲しくなった。え?いまどき、持ってないのかって?
そうなんです。アッシそういうの、持ってない。512MBの小さなヤツなら持ってるけど。
塚田は、いとも簡単にMP3で40曲ほど送ってくる。というか、WEB上のストレージからダウンロードするんだけどね。前日の夜に話して、翌日の早朝には、もう送信してくる。
たぶん彼のiPodか何かには数えきれない楽曲がきちんと整理されて入っているのだろう。
う、う、うらやましい。でも、いいや俺は。512MBあれば、けっこう入れられるし…

その年のLIVE課題曲を決めるときは、この作業から始まるわけよ。もちろん、個人個人の希望みたいなものは、あれば、事前に塚田に知らせるけど。とにかく曲想的にも時代的にも、塚田のボキャブラリーはめちゃくちゃ豊富。類いまれな公平感を以って、候補曲をピックアップしてくる。しかも、全曲とも歌唱可能という保証付きで。若い時のように、ボーカル担当の技量と嗜好で演奏曲が左右されることは、最近のThe Rainには全くない。

難しいのは、候補曲から課題曲へ絞り込むステップ。まず、候補曲をじっくり聴きこむ。このフェーズで忘れてならない重要な要素は「はたして全員が演奏可能なレベルか?」という視点。見落とされがちなハモリは、特に真剣に聴く。練習すれば出来るのだろうか?
こうして、冷徹に、どんどん落としていく。それでも、15曲近くにしか減らない。
次に考えることは、新曲と既存曲の割合。新曲を増やしても練習する回数は限られている。
同時に、シーサンバラバラにならない、コーナーというかテーマというか、LIVEとしての【まとまり】とか【流れ】ができるように考える。これって、けっこう難しい作業です。

もういいや。あとは好き嫌いだ。こうして細貝は、自分なりに課題曲をリストアップする。
オリジナルを含めて15曲くらい。新曲を5曲以下に抑えないと、練習不足でドエライ目にあう。これをバンドメンバーに連絡する。各人各様の好みもあるし、考え方もあるので、その辺をすり合わせる。で、とりあえず課題曲を決めて、毎年2月から練習を開始する。

それでだ。頭で考えたことと、実際にスタジオで練習するとでは、これがまた、ずいぶん違うものなんだよ。どういじっても、人様の前で演奏するのは失礼になると誰でも想像がつく曲もある。そういう曲は半年やってもダメだ。ところが逆に、やるたびに良くなっていく曲もある。これは気分がいいものだ。例を挙げれば、Separate WaysとかJETなんかは、その類のナンバーだった。最初がひどければひどいだけ、感動は大きい。カバー曲は安易な妥協的アレンジはしない方針。オリジナルはお手本がない分、自分達のテクニックやセンスが出てしまうが、工夫をしながら創り上げていく作業は最高。こんな感じで毎月
の練習を通じて修正していく。そのスタートは課題曲選びだってこと、忘れないでね。