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更新日 2015-08-06 | 作成日 2007-09-15

Stories of The Rain

夢見るころを過ぎても

第三十章 酒とロックと女の日々…「ロック」

written by Akio Hosokai

20050921ab4049ce.jpg「ねぇ~、ねぇ~」…裏山から、女の寂しい声が聞こえる。The Rain がステージで演奏を始めると決まって聞こえるらしい。ウェートレス役の女子高生達が怖がっている。ある日、有志がその裏山に登って調査した。いやいや、驚いた。裏山の斜面の土の表面に人の肋骨のようなものが浮き出ていた。少なくとも、そう見えた。
ライヴハウスのマネージャー役の屋代が言うには、大昔、大きな津波があって、その際に遺体を裏山に埋めたとか何とか。うわ~、ほんとかよ。しかし、もし埋めれらた女の声であっても、大音響のライヴの最中に離れた裏山から声が届くわけはねえだろ。キーボードの音が、何かの加減でそう聞こえただけだ…そう結論づけた。けどね。

The Rain のアンプ構成は、ボーカル専用の100Wアンプ、リードギター用とキーボード用の50Wアンプが2台、サイドギター用の30Wアンプ、ベース専用の80Wベースアンプ。これにエコーチェンバー。当時の学生アマチュアバンドとしては、まぁまぁのセットだと思うぜ。
この夏限定のメンバー構成は、リードギター兼ボーカルの仲本、サイドギター兼ボーカルの外間、アルトサックスの谷、キーボードの和田、ドラムスの荒木、ベースの細貝。定番の4名に加えて、演奏する曲によって外間と谷が出たり入ったりする。

ライヴハウスをやって一番感じたことは、とにかくノッテ演奏しないと、ろくな音が出ないということ。彼女がダブルブッキングしてしまいそうな心配事があると、それはもう、ノルどころの心境ではない。清廉潔白でまじめな生活を維持していないと、ロックバンドは務まらない。いや、そうじゃないだろ。安心してノレル環境を構築するための気遣いとそして悪巧みを、日ごろから忘れないことだな。
次に、人前で演奏することに、妙に度胸がついてしまったということ。そう、演奏途中で構成が狂っても、阿吽の呼吸で修正できるようになってしまった。それが平気になった。これはまずいでしょ。演奏する曲の基本は、全員がキチンと押さえておくことだぜ。

そうは言っても、ステージは楽しかった。世にいう「70年代のロックバンド」を地で行く
ような錯覚に陥っていた。学生ロックバンドの「はしり」でもあり、3週間ぶっ通しで海水浴場でのライブハウスを体験したアマチュアはそう多くはないだろう。日によって違うが、グループ客が来てくれた時なんざ、いっぱしのライヴハウスみたいな感じだったぜい。

この「ロック」とう章は、63歳になった今も、これから先も、ずっと関わっていくテーマである。かれこれ何年やってきたか、そして、あと何年やっていかれるか分からないが、The Rainのルーツが、この真夏のライヴハウスにあることだけは、ぜったいに間違いない。