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更新日 2015-08-06 | 作成日 2007-09-15

Stories of The Rain

夢見るころを過ぎても

第十四章 還暦をすぎたロックバンド

written by Akio Hosokai

yaon011.jpg早めに会場に着いたので、客層を観察した。若めの人もいたが、圧倒的に中高年が多い。ヒッピー風のおっさん、ジーパンにTシャツのおばはん(これが、けっこう、いい女!)、あの70年代に青春だった人々が闊歩している。「フォークソングなんて聴きたくもねえ」って顔に書いてある。ここは、日比谷野外音楽堂。

平成20年10月5日。FTB(フラワートラベリンバンド)のライヴが行われた。前座が、あのピンククラウド(ジョニー、ルイス&チャー)なのだから、「すげえ!」の一言だ。
「ジョニー、かっこいい~!」という客の声援に対し、「ジョニーだとぉ!何歳だと思っているんだ!ジョニー様と呼べ!」チャーが会場をわかせた。「まいった!」としか言いようのないドライヴ感。始めから終わりまで、スタンディングオベイジョン。
FTB。ステージの途中で、「全員、60歳を超えているんだぜ!」とジョー山中が叫んだ。
海外での評価が高かったオリエンタルロックは確実に進歩していたし、ジョー山中は昔と同じ超高音で唄い叫んだ。昔のナンバーを聴いた時、思わず落涙。アンコールが近づく頃、雨が降ってきた。この野音で国内ツアーが終了し、これから海外ツアーだと。

いつの頃からか、エレキ楽器を使って、歌謡曲だかフォークだか、訳のわからん曲を演奏するバンドが増えたが、ピンククラウドとFTBは本物のロックバンドだ。柔なバンドではない。この日本では、今も昔も、貴重な存在。

で、ライヴってのは、単に演奏だけのインパクトではない。ミュージシャンから滲み出てくる何かが、音と視覚を媒体として、客席に突き刺さってくる。この歳になって、やっと分かった。彼らの場合、滲み出てくるものは「否定しようのない圧倒的な重さ」だった。ロックに対する自信と挑戦。経験の深さ。はんぱでない年齢。ステージでの動きや衣装。どれをとっても、重く、かっこいい。…ん?

そう、かっこいい!
かっこいい!…これを求めて、男は、スポーツやバンドや暴走族をやるんじゃないのか?
かっこいい!…「上辺だけの軽薄者」って言うのは止めてくれ。それは、かっこ悪い奴が言うことだぜ。学生時代、恋愛もせず、暗記だけの勉強漬け青春を過ごした裁判官とかさ。

「The Rainはカッコイイ」と言っている訳ではありません。演奏する音はともかくとして、視覚的には100%その辺のジジイです。アマチュアだから、それでいいか…。
いや、野音ライヴを見た今となっては、少しでも、かっこいいバンド、かっこいいジジイに近づきたい。心ひそかに、そう願っているのであります。よろしく!